大判例

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大阪高等裁判所 昭和43年(う)1355号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕本件清酒を受領した被告人の心情について考察してみるに、予告もなしに前記のような菅野らの訪問を受け、いきなり供物として清酒を渡された被告人が、当初その趣旨を詮索するだけの余裕がなかつた事情はうかがわれても、やがて菅野らから中野の選挙対策の話がもち出され、同人のための得票に協力方を直接間接に依頼する趣旨の話題に移つたさいには、これに対する被告人の前記応答の様子からみて、供物の体裁で渡された右の清酒が一部にはその意味を含みながら、主として前記選挙の選挙人である自己に、中野への投票およびその得票活動を依頼することの謝礼の意味で提供されたものであることを、心中において次第に承知するにいたつていたものと認めるほかなく、かかる知情の存在は、前記被告人の検察官に対する供述調書謄本中に被告人みずからこれを認める趣旨の供述がみられるうえに、右菅野らとの会談の折、たまたま隣の部屋に居合わせた被告人の弟に対して、かようなものを受け取つてもさしつかえないかどうかを秘かに相談した事実が右供述調書謄本中にあらわれていることによつても裏づけられる。かかる場合、被告人が神社の宮司という職にあつたことの一事をもつて、その社会人としての立場や、選挙人としての地位が全く失われるべき筋合のものではないから、いやしくも神社に対する神せんとして提供されたものである以上、神職にある者は、その社会的又は法律的意義を判断する余地もなく、これを純粋の神せんたる趣旨においてのみ受領することが公知の事実であるとする原判示のごとき解釈が、事象の一面にとらわれた独自の見解であることはいうまでもない。そして、物品の贈与が、一部に他の目的を含んでいても、これと併存して、特定の候補者への投票又は投票獲得の報酬とするなど同人に当選を得させる目的をもつて選挙人に対して行なわれた場合においては、公職選挙法二二一条一項一号にいわゆる買収としての供与に該当するものと解するにはなんらの支障もなく、したがつてまた、少なくとも右のような報酬の趣旨の含まれていることを了知しながらこれを受領した場合において、同条項四号のいわゆる受供与が成立すると解すべき点にも疑義は存しないから、本件菅野らにおける前記趣旨に基づく清酒六本の贈与が右法条の供与にあたり、被告人においてその趣旨を知りながらこれを受領した行為が同法条の受供与罪を構成するものであることは明らかといわなければならない。(三木良雄 神保修蔵 西川潔)

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